旅館・ホテルのWEB集客戦略を解説!OTAとSNSどちらに力を入れるべき?
旅館・ホテル業界(宿泊業界)のWEB戦略記事第二弾です。前回はWEBサイトのSEOに限定した解説でしたが、今回はWEB集客全体の戦略について解説します。特にOTAとSNSを軸にした内容となっているので、旅館・ホテルにおけるWEB戦略で悩んでいる、OTAやSNSへのアプローチの仕方を知りたい方は参考にしてください。
Contents
宿泊業界でWEB集客に力を入れるべき理由とは?
かつて旅行をする際は電話での直接予約や店舗型の旅行代理店での予約が一般的でした。しかしインターネットの発達とともに次第に変化していき、今ではほとんどの人がWEB上で旅行予約・情報収集をするようになっています。
WEB上での集客が重要なのは明らかではあるものの、宿泊業界のWEB事情が具体的にどのような状況にあるのか、詳しくみていきましょう。
宿泊客の情報収集手段の変化-OTA依存からの脱却-
旅館やホテルの情報収集・予約手段がWEB中心となってからは、長らくOTAがその中心に存在していました。さまざまな宿を簡単に比較でき、そのまま予約ができるOTAは、インターネットが広く普及してからの国内旅行を支えてきました。
一方で、デバイスやメディア、ツールの発展や多様性が進むにつれ、特に若年層を中心に国内旅行の情報収集手段に変化が生じています。OTAだけではなく、宿の公式WEBサイトやSNSでの情報収集が増えたのです。
特にSNSの影響は顕著となっており、いわゆる『Z世代(19~25歳)』ではおよそ半数がSNSを重視するという調査結果が発表されています。26~41歳の『ミレニアル世代』でも30%前後がSNSを重視しており、SNSが集客において重要な役割を果たしている状況となっています。
<参考資料>JTBF旅行実態調査2022
OTAだけでは集客や利益の最大化が難しい
長らく国内旅行を支えたOTAですが、今でも多くの人が情報収集・予約手段として利用しています。しかし宿側の視点で考えた場合、OTAにはいくつかの問題があります。
①多くの競合と簡単に比較されてしまう
②掲載できる情報量に制限があり、ブランドイメージを打ち出しにくい
③手数料
OTAの多くはページのフォーマットが一定のため、独自のブランドイメージを打ち出しにくく、アクセスや料金、口コミ評価が主な比較軸となってしまいます。
さらにOTAへの掲載は手数料が発生するため、自社のWEBサイト経由の予約よりも利益率が低いというのもデメリット。しかもOTAのキャンペーンなどでOTAの料金が最安値になってしまう場合もあり、利益率がさらに圧迫されてしまいます。
また、仮に登録しているOTAが閉鎖された場合、OTAのみに集客を頼っている宿は存続の危機に陥りかねません。
SNSなどの情報収集手段が増えた今、独自性が打ち出しにくく手数料による圧迫があるOTAにだけ依存してしまうのは得策ではないのです。
ブランドイメージや宿泊イメージが重要
OTA頼りからの脱却を図るとなると、SNSやWEBサイトでの集客戦略が重要となります。発信できる情報が少ないOTAとは異なり、自由に情報を発信できるのがSNSやWEBサイトのメリット。その際にポイントとなるのが、宿のブランドイメージや宿泊イメージをどれだけ打ち出せるかです。
多くの競合と比較されるOTAと違い、SNSやWEBサイトを見てくれる人は自分たちの宿に一定の興味を持ってくれている人となります。その人たちに対して宿の魅力や特長を伝え、実際の宿泊イメージを具体的に思い描いてもらうことが予約に繋げる大事なポイントとなります。
料理、温泉、部屋、内装、サービスなど、自分たちの強みや魅力を再認識し、独自のブランドとして定義するのが集客戦略の第一歩です。また、ターゲットとなる宿泊客を選定することで最適なプロモーションや媒体が見えてくるでしょう。
WEB集客が充実している宿がまだまだ少ない
OTAに依存しないWEB集客戦略をおすすめする理由として、WEB集客に力を入れている宿が少ない点があげられます。
コロナ禍による経営状況の悪化や、宿内にノウハウのある人材が不足している影響もあり、OTA以外のWEB集客戦略を実施できない宿も多いでしょう。
そのなかで自分たちのブランドイメージやターゲット層にもとづいたWEB集客戦略を実行すれば、競合との争いに勝つことも可能です。
OTAに登録するだけで最大限の集客ができた時代は終わりつつあります。これからは、SNSやWEBサイトなどさまざまな媒体を活用して、自らターゲットとなる旅行客との接触を増やすことが求められるでしょう。
旅館・ホテルの主なWEB集客方法の紹介
ここでは、具体的にどのようなWEB集客方法があるか紹介します。適切なプロモーションや媒体を選択し、集客を最大化させましょう。
未だ宿泊予約の中心にいるOTA
「楽天トラベル」や「じゃらん」に代表される、オンライン旅行予約サイトです。
2021年度版「営業状況等統計調査」によると、およそ半数となる48.3%がOTA経由の宿泊予約になっています。予約の大部分を占めており、多くの旅行客が利用することから、宿にとってOTAへの掲載はほぼ必須といえるでしょう。
ただしOTAに掲載しただけでは大幅な集客アップにはつながりません。画像や文章でいかに宿の魅力を伝えるか、高い口コミ評価を上げるためにいかにサービスの質を高めるかなど、恒常的な対策が必要になります。
宿の魅力や価値のプロモーションをOTAだけに依存するのが時代にそぐわないのも事実。しかし一方で、未だOTAからの宿泊予約が主流であるのが現状のため、数ある競合のなかから選ばられるためにもOTAで行う対策は継続的に実施すべきでしょう。
- 見映えの良い画像を登録する
- ページ内やプランの詳細で、宿の魅力が伝えられる文章を掲載する
- 良い口コミ評価につながるサービスを提供する
- 悪い口コミ評価の内容を真摯に受け止め、改善策を実行する
若い世代を中心に情報収集手段として活用されているSNS
特に若い世代を中心に利用されているのが、「Twitter」や「Instagram」をはじめとしたSNSです。
すでに紹介したとおり、41歳までの世代では30~50%ほどが宿の情報収集にSNSを利用しています。OTAの存在感はいまだ健在ではあるものの、若い世代を呼び込みたいならばSNSでの集客は不可欠となります。
しかし、SNSによるコアユーザーの違いには注意が必要です。たとえばInstagramでは若い女性がコアなユーザーとなります。そのため、30代男性を呼び込みたいのにInstagramでの集客に力を入れても、思うような効果が得られない可能性が高くなります。それぞれのSNSの特性やユーザー層を把握し、適切な媒体を選ぶことが求められます。
SNSでターゲットユーザーに宿の魅力を伝えることができれば、認知拡大にもつながります。またほかの手段に比べて手軽に発信や更新ができるため、業務の合間のちょっとした時間で作業できるのも利点。OTAとは異なり自ら進んでターゲットにアプローチできるのもメリットで、能動的に集客できる手段としておすすめです。
- SNSごとのユーザー層を把握しておく
- 日常的に更新をする
- ターゲット層にあわせたSNSを選択する
- クオリティの高い画像を発信する
ブランドイメージを前面に打ち出せる公式WEBサイト
宿の公式WEBサイトも集客手段として非常に大事なチャネルです。旅行客の多くはOTAやSNSを利用して情報収集しますが、そのなかで候補となった宿の公式WEBサイトをチェックされることが多いからです。
特にOTAは小さい画像しか見られず、情報も限られているため、より宿泊イメージしやすい情報を求めて宿の公式WEBサイトが利用されます。その際、宿の名前で検索したときに検索結果に表示される、きれいな画像や独自のデザインのサイトにして宿の魅力を最大限伝えるなどの対策が効果的でしょう。
一方で、いわゆる「直予約」につなげるための対策は業界全体の課題となるでしょう。手数料の発生するOTAと異なり、自社のWEBサイト経由の予約は利益率が高く、利益の最大化を目指すには直予約の増加が不可欠です。
対策としては、予約ページへの導線を目立たせる、予約ページのレイアウトや入力フォームをわかりやすくするなどがおすすめ。しかし前述の調査では直予約はわずか11.1%にとどまっており、OTAの影響が大きい現状では対策に限界があるのが事実でしょう。
- 宿の名前で検索したときに検索結果に出るようにしておく(SEO)
- OTAには掲載できないような大きなサイズの画像を使用する
- 宿のブランドイメージや魅力を打ち出したデザインで制作する
- 予約ページへの導線や予約ページの使いやすさを整えておく
ユーザーに直接アプローチできるWEB広告
WEB広告は、ターゲットユーザーに直接的にアプローチできる手法として有効な一手です。
検索結果画面に表示される「リスティング広告」は、ユーザーのニーズにあわせた広告を表示して訴求できます。また、WEBサイトやアプリに表示できる「ディスプレイ広告」は画像付きで表示されるWEB広告。視覚的に宿の魅力を訴求できるため、ユーザーの興味をひき付けWEBサイトへの誘導や認知向上にアプローチできます。
WEB広告はニーズの掘り起こしや獲得に直接アプローチできる利点がある一方、適切なターゲティングや運用を行わないと効果が出しにくい点は注意。集客につながらない広告を出し続けているとコストだけが膨らむ一方になります。
WEB広告の配信は経験やノウハウが豊富な専門企業に依頼するのをおすすめします。
- 検索結果やサイト・アプリに広告を掲載できる
- 見込みユーザーに直接的にアプローチできる
- 画像付きのディスプレイ広告では質の高い画像で認知拡大を期待できる
旅館・ホテルの集客におすすめのSNSは?
宿のWEB集客にはさまざまな方法がありますが、そのなかでも若い世代を中心に広く活用されているのがSNS。OTAや公式WEBサイトだけでなく、SNSの有効活用がWEB集客における重要なポイントとなります。
ユーザー数が多く、比較的匿名のつながりが重視される主要なSNSについて、それぞれの特徴やターゲットユーザーについて紹介します。
若い女性のユーザーが多い「Instagram」
Instagramは画像や動画をメインとしたSNS。国内ユーザーはおよそ3,300万人で、個人だけでなく、企業やインフルエンサーによる投稿も盛んに行われています。友人同士のつながりに加え、購買行動のための情報収集としても活用されているのが特徴です。
いずれの年代も女性の利用者数が男性を上回っています。特に10代・20代の利用が非常に多く、若い女性向けのSNSといえるでしょう。画像や動画映えするファッション、フード、美容、旅行といった商品・サービスとの相性が良いのも女性の利用者が多い要因と考えられます。
旅行との相性が良いことから、公式インスタグラムを運用している宿も少なくありません。宿泊イメージを伝えやすく、周辺観光の紹介やアピールも可能です。ただし写真や動画がメインとなるため、クリエイティブの質が高くなければプロモーション効果が薄れてしまう点は注意。
Instagramの特徴 | 画像や動画がメイン |
---|---|
国内ユーザー数 | 約3,300万人 |
主要ユーザー層 | 10~20代女性 |
運用のしやすさ | 〇 |
必要な更新頻度 | 高 |
クリエイティブ | 質の高い写真が必要 |
幅広い使い方ができる「Twitter」
Twitterはテキスト情報主体のSNS。140文字という制限がありますが、画像や動画も投稿できるため幅広い情報発信が可能です。
国内のユーザー数はおよそ4,500万人ですが、Instagramに比べると匿名性が強いのが特徴で、オンライン上だけの関係性で成立しているケースも非常に多いです。またリアルタイム性が強いため、情報収集ツールとしても活用できる点も大きな特徴の一つといえるでしょう。
ユーザーの男女比はほぼ半々で、20代が最も多く利用しています。
Instagramとは異なり日々の何気ない一言などもよくつぶやかれるため、企業のマーケティングや調査にも利用されます。拡散力の高さを活かせればどのような業界・企業でも効果を得ることができるでしょう。
旅館やホテルのプロモーションにおいては画像や動画によるインパクトを重視したいこともあり、Instagramに比べると優先度は下がるかもしれません。しかし独自の情報やユーモアを交えるなど、ユーザーに有益な情報や楽しい情報を発信続けることでファンやエンゲージメントの獲得にアプローチできます。ユーザー数の多さや拡散性の高さを最大限活用できれば、宿にとって有益なプロモーション手段となるでしょう。
Twitterの特徴 | テキスト主体+画像・動画 |
---|---|
国内ユーザー数 | 約4,500万人 |
主要ユーザー層 | 10~20代男女 |
運用のしやすさ | 〇 |
必要な更新頻度 | 高 |
クリエイティブ | クリエイティブの質より企画力 |
動画主体で広告収入も期待できる「YouTube」
YouTubeは世界最大の動画共有サービスで、国内ユーザー数はおよそ7,000万人です。動画が主体となるSNSとなり、InstagramやTwitterと比べると高い年代の利用者数が多いのが特徴です。特に40~50代の利用が多く、男女比は半々となっています。
個人でありながら数千~数万人以上のチャンネル登録を集めているケースもあり、ファンを増やせればプロモーションだけでなく広告収入も期待できます。
映像で発信できるため宿泊イメージをダイレクトに伝えやすいのが最大の利点でしょう。しかし定期的な動画更新を維持しなければ登録者数を増やすのは困難で、制作コストとのバランスを考えると優先度は決して高くはありません。
宿の公式チャンネルよりも、手心の加えられていないよりリアルな映像が見られる個人の旅行系チャンネルの方が、情報収集手段としては好まれる傾向にあります。ブランド力や企画力、制作リソースを備えていないと最大限活用するのは難しいでしょう。
YouTubeの特徴 | 動画発信専用のSNS |
---|---|
国内ユーザー数 | 約7,000万人 |
主要ユーザー層 | 40~50代 |
運用のしやすさ | × |
必要な更新頻度 | 中~高 |
クリエイティブ | 高い質が求められ、高いコストが掛かる |
Z世代に圧倒的人気の「TikTok」
TikTokは動画を中心としたSNSです。動画中心ではありますが、YouTubeとは異なりスマートフォンに特化しており、数十秒程度の短編動画がメインコンテンツとなっています。
ユーザー数はおよそ1,700万人。スマートフォン特化、数十秒程度の動画が中心ということもあり、10代の利用率がずば抜けているのが特徴です。Z世代をターゲットとする場合には必ず運用したいSNSといえるでしょう。
コンテンツの内容は面白さや共感が重視され、独自性の強い動画を発信できれば多くのフォローが期待できます。利用者とのコミュニケーションが取りやすいのもTikTokの特徴的なメリットといえるでしょう。
TikTokの特徴 | 短い動画がメイン |
---|---|
国内ユーザー数 | 約1,700万人 |
主要ユーザー層 | 10代が圧倒的 |
運用のしやすさ | △ |
必要な更新頻度 | 中~高 |
クリエイティブ | 画質のキレイさよりも面白さ |
旅館・ホテルのSNS運用はターゲットによって使い分ける
旅館・ホテルのSNS運用では、業務の合間でも運用しやすいInstagram、Twitter、TikTokがおすすめです。しかし闇雲にすべてに手を出しても効果は見込めません。宿のターゲットユーザーに合わせて、適切なSNSを選択するのが重要です。
TikTok | |||
---|---|---|---|
コンテンツ | 画像・動画メイン | テキスト主体+画像・動画 | 短編動画 |
国内ユーザー数 | 約3,300万人 | 約4,500万人 | 約1,700万人 |
主要ユーザー層 | 10~20代女性 | 10~20代男女 | 10代が圧倒的 |
運用のしやすさ | 〇 | 〇 | △ |
必要な更新頻度 | 高 | 高 | 中~高 |
クリエイティブ | 質の高い写真が必要 | クリエイティブの質より企画力 | 画質のキレイさよりも面白さ |
SNSによって主体となるコンテンツの形式やユーザー層が異なるため、その特性を最大限活かすために明確な意図や戦略が必要です。若い世代や女性をターゲットにしたい場合はInstagramやTikTok、テキストや画像など幅広くリアルタイムに情報発信したいならTwitterなどと使い分けるのがおすすめです。
OTAとSNSはどちらも重要!戦略に基づいてWEBサイトの整備や広告配信も視野に
旅館・ホテルのWEB集客においては、OTAとSNSどちらも重要です。WEBのツールやサービスが多様化している現在、OTAだけに依存するのではなく、戦略に基づいて適切なチャネルを選択していくことが求められるでしょう。
OTAの利用ユーザーはまだまだ多く、一次的なプロモーション手段として優秀です。一方で、若い世代を中心に情報収集手段がSNSに移っているため、SNSにおける情報発信も積極的に進めていくべきでしょう。特に若い世代や女性をターゲットとしたい宿にSNS運用はおすすめです。
また、OTAやSNSの受け皿となる公式WEBサイトの充実も必要不可欠。制限なく自由に構築できるWEBサイトでこそ、ブランドイメージや宿泊イメージをアピールできる絶好の場です。どれか一つのみに注力するのではなく、総合的な戦略を打ち出していくことが重要です。
まとめ
以上が旅館・ホテルのWEB集客戦略についての解説でした。
これからは、宿のプロモーションをOTAだけに依存せず、さまざまなチャネルを活用したWEB集客戦略を練ることが求められています。そのなかでもSNSはそれぞれに特徴やユーザー層が異なっており、ターゲットに基づいて適切に選択する必要があります。
InstagramやTwitter、TikTokを活用して若い世代を取り込むと同時に、OTAやWEBサイトの整備・対策も進めながら宿のブランドや宿泊イメージを多くの人に発信していきましょう。