トラッキング禁止!クッキーレスとは 〜基本を知る〜
2021年6月、Googleが2023年後半を目標にクッキー(Cookie)を段階的に廃止することを発表し、広告業界ではまさに大変革が起ころうとしています。SNS広告等インターネット広告が増えてきた現在、この流れは広告業界内に止まらず、どの企業にも影響を及ぼすため、クッキーレスについての知識が不可欠といえます。
ここでは、まずクッキーについて基本的な事項を解説していきます。
クッキーとは
クッキー(Cookie)とは、Webサイトへアクセスを行なった際に、サイト側が同じ人が再訪してきた事がわかるように、WebサーバがユーザーのPCやスマホに保存する小さなデータファイルを指します。あるサイトにアクセスした際、「クッキーを有効にしてください」というメッセージが表示されたことはないでしょうか。これを有効にすると、ユーザー自身がWebブラウザに入力した情報(IDやパスワードなど)や利用環境、IPアドレスなどが保存されることになり、サーバはそれらの情報を元に、そのユーザーに合ったページを生成します。なお、クッキーは発行したドメインのサーバでしか中身を見ることができません。
ちなみにクッキーとよく混同されるものとして、「キャッシュ」が挙げられます。キャッシュとは、閲覧したWebページの情報を一時的に保存する機能で、キャッシュデータを保存しておくと、2回目以降同じWebページに訪問したときに表示するスピードが上がり、より閲覧しやすくなるのが特徴です。クッキーとキャッシュでは、保存する内容が異なります。
クッキーの種類
クッキーは発行されるサーバによって2種類に分けられており、それぞれ性格が異なります。一つは、訪問したサイトと同一ドメインのサーバで発行される、つまり訪問したwebサイトから直接発行されているクッキー。これを「1st(ファースト)パーティクッキー」と言います。
もう一つは、訪問したサイトとは別のドメインのサーバで発行されるクッキー。こちらを「3rd(サード)パーティクッキー」と呼びます。
1stパーティクッキーは、自社のwebサイトを訪問したユーザーの情報を管理するために利用されています。これにより、例えばあるサイトで買い物中、お客様情報の入力の途中でサイトから一時離脱をしても、買い物カートに入れた商品情報は保存されるため、再度サイトに戻ってきた際に、改めてカート内の商品情報の閲覧や購入が可能です。一方、3rdパーティクッキーは、ドメインを超えてユーザーを追跡できるため、ターゲティング広告を提供する広告ネットワーク会社等によって発行され、利用されています。例えば、あるサイトで買い物のため閲覧中に途中で離脱し、別のサイトを訪問した際に、当該サイトの広告に先ほど閲覧した商品が出ている場合などに使われています。
なお、同一の会社が複数のドメインを使用している場合、ドメインが異なるサーバで発行されたクッキーとなり、それぞれ3rdパーティクッキーとして扱われています。キャンペーンサイトやコンテンツサイト用に、メインのwebサイトとは異なるドメインを用意するケースがこれにあたります。
トラッキングとは
先述した機能の他に、クッキーには「トラッキング」を行う機能があります。そもそもトラッキングとは、ユーザーの訪問履歴やサイト内の行動を記録・追跡することを言います。3rdパーティクッキーは、ユーザーの行動と関連性の高い広告を効率よく掲載するために、広くネット上でどんな行動をしているのかをトラッキングしています。これは後述するリターゲティング広告の要となる機能として利用されています。
デメリットから見るクッキーレス化
クッキーは、SNSに一度ログインすれば時間が経ってもID・パスワードを入力せずにログインできる点や、ネットショッピング中に商品をカートに入れてからウェブサイトを閉じても、再訪問時に商品がカートに入ったままになっている点などでユーザーの快適なネットショッピング、SNS利用に寄与しているといえるでしょう。
しかしながら別の角度から見た場合、個人情報保護の観点からいくつか懸念点も出てきています。例えば、収集されるIDやパスワードといったユーザーの個人情報について、不正アクセスの危険性が考えられます。また、特に3rdパーティクッキーは、もともとユーザーが閲覧していたWebサイトを離れた後のユーザーの行動を追跡する点で、ユーザーのプライバシー侵害に繋がるとの見方が広がっています。
3rdパーティクッキーについては、2019年に「Firefox」を展開する米国企業のモジラが受け入れない初期設定を行い、また2020年3月、アップルがWebブラウザ「Safari」での受け入れを完全に終了させました。Googleもこのような個人情報保護を背景として、3rdパーティクッキーの利用を規制し、クッキーレスに向けた行動を推進しているといえるでしょう。
クッキーレス化の影響
クッキーレス化に伴い、もっとも影響を受けるものの一つに、リターゲティング広告が挙げられます。リターゲティング広告とは、一度自社サイトに訪問したユーザーを、サイト離脱後も追跡する広告のことを指します。他のサイトを訪問した際、ページの隅に載っている広告が先ほど離脱したサイトの商品広告だったという経験はないでしょうか。離脱したユーザーを逃してしまわないために、また、新規顧客よりもCV率が高くなる可能性のあるリピーターをターゲットとするために生まれたのがリターゲティング広告です。
このリターゲティング広告はクッキーを利用する仕組みをとっています。このため、クッキーレス化が進むとこの広告自体打ち出せなくなるおそれがあり、このリターゲティング広告をメインに利用していた企業は、変更・改善を余儀なくされていると状況といえるでしょう。
終わりに
今回のクッキーレス化のように個人情報保護の観点から規制される事柄が増え、企業はより正確なユーザー情報を得づらくなってきています。個人情報自体はもちろん十分保護されるものではありますが、情報自体は企業の広告運用ひいてはより良い商品開発、経営を行うためにも欠かせない要素と言えるため、早急な対策が必要です。
まずはクッキーについて理解し、自社としてどのような対応が理想となるか、また成果に繋がるかを十分吟味した上で取り組んでいきましょう。