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これからのWebサイト制作 –シームレスな顧客体験構築の重要性–

この記事では、クッキーレス化において実際にWebサイトの制作を行っていく際に考慮すべき重要なポイントについてお話ししていきます。

 

クッキーレス化に伴う1stパーティデータ取得の重要性

近年、個人情報の保護の観点から、2種類あるクッキーのうち3rdパーティクッキー(訪問したサイトとは別の第三者が発行するもので、複数のサイト(ドメイン)を跨いでユーザーの情報を記録・管理することが可能)について、従来の無許可での取得ができなくなりました。これに伴い、トラッキングデータの精度が落ちることから、Web広告効果の低下が懸念されています。特に、実際にサイトを訪れたユーザーをターゲットにして配信することでコンバージョン率が高くなりやすくなるリターゲティング広告に頼ってきた企業にとっては、大打撃を受ける可能性があるといえます。

 

そこで鍵を握るのが「1stパーティデータ」です。1stパーティデータとは、1stパーティクッキー(訪問したサイトが発行するもので、自社のwebサイトを訪問したユーザーの情報を管理するために利用される)に加え、購買履歴やPOSデータ、自社が保有する顧客情報など自社サイトで収集したユーザー情報をいいます。顧客や見込み客が自社サイトで自社商品に対してどのように行動しているかを正確に把握することができ、顧客ニーズをより把握することができる点が大きなメリットです。こうした情報をしっかりと収集し、活用することで顧客一人一人に最適なアプローチができるようになります。

 

データ取得がしやすいサイト制作を行う

1stパーティデータを効果的に取得していくためには、ユーザーにしっかりと自社サイト内を回遊してもらえるようなサイト作りが必須です。そして、前回解説したその人個人の興味関心・行動に注目しようと考え出された「パーソナライゼーション2.0」の観点から、ユーザーの興味を明らかにするためのコンテンツを種類ごとに分けて用意するなどして、ユーザーの行動から、どんな興味関心を持っているか探っていくことが重要です。

 

この興味関心を自社サイトを通じて探っていく上で大切な点は、メタ情報の収集と戦略構築です。そもそもメタ情報とは、そのデータを表す属性や関連する情報を記述したデータのことを指します。いわゆる「タグ」がこの意味で使われます。コンテンツにこのメタ情報(タグ)をつければ、ユーザーが見たページの情報を細かく分析することで、ユーザーはなぜそのページを閲覧したのか、それはどのような興味から来るのかなど、ユーザーが持つどの興味関心に関連しているのかを捉えられるようになります。

 

例えば、紹介したい商品がヨガウェアで、商品紹介のページに朝日を浴びながらヨガをする女性の写真を入れた場合、その商品名のタグに加え、「ヨガ」「朝日」「爽やか」「朝活」「伸縮素材」といった商品の特徴や利用するシチュエーションについての情報、また「柔らかめの口調」といった写真や文章の傾向についてのタグ付けをすることで、従来よりもより精度の高いターゲティングが可能となります。

 

このように何をどのようにタグ付けするかがとても重要ですので、まずは早期に取り組みを開始させましょう。ちなみに、このタグ付けや管理自体は最新のCMSがあれば、容易に構築が可能です。CMSとは、「Contents Management System(コンテンツ・マネジメント・システム)」の略で、テキストや画像、テンプレートなどのデザイン・レイアウト情報などWebサイトのコンテンツを構成するものを一元的に保存・管理するシステムのことをいいます。

 

他方、2つ目の戦略構築は企業にとってなかなかハードな仕組みづくりといえます。これまでは、自社サイトを訪れたユーザーがいた場合、サイトの情報として取得するのはどのページを閲覧しているか、どのURLを見ているのかのみでした。しかし、これからは自社商品を使うのはどんな顧客かを想定し、メタ情報を増やしやすいコンテンツはどのようなものか、どこに配置したらより効果的か、タグはどのようなものを付けたら良いか等検討していく必要があります。また、ユーザーがどのコンテンツを閲覧したかをメタ情報を使って収集し、パーソナライズな仕組みを作り上げていくことも重要です。

 

そのほかに、最新のユーザー情報を取得するために、ユーザーがサイトを利用する時などに、徐々に追加のデータ収集を行えるよう事前に戦略を立てておくこともキーポイントです。例えば、自社商品に興味を持ったユーザーに対し、登録を促したり、クーポンを提供したり、またアンケートを配布したりなどの施策を打つとより効果的です。それら施策から取得したデータはユーザーの興味関心を推し量る上で、非常に重要なデータとなります。

 

注目されるCXM ーシームレスな顧客体験構築の重要性ー

CXMとは「Customer Experience Management」の略語であり、顧客体験管理ともいいます。

 

従来から行われている顧客一人ひとりとの関係をなるべく詳細にデータベース化することによって、それぞれの顧客のニーズに対応する最適なアプローチのほかに、企業の提供する商品やサービスを購入する際に体験できる感動や心地良さなどの感覚的な付加価値を提供することで、顧客満足度を高めていこうという手法を指します。ユーザーからパーソナルな体験を求められる現代において、CXMはユーザーにとってはもちろん、企業にとっても、顧客満足度が上がればリピートやさらなる購買に繋がり成果を上げやすくなるという利点があるといえます。ただし、こうした体験の実現には、莫大なデータを統合して利用する必要があり、手作業ではかなりの時間がかかります。

 

そこで、あらゆるデータをひとつにまとめて整理し、全社で共有し、優れた顧客体験を迅速に創出するための基盤が必要との観点から、例えばアドビではCXMプラットフォームとして「Adobe Experience Cloud」にてコンテンツとデータを組み合わせた製品を打ち出し、様々なソリューションを提供しています。アドビの製品によって、①全社をまたいでデータ活用を標準化、②AIを活用して迅速なインサイト獲得を実現、③莫大なデータの管理と責任ある運用が可能となります。(詳細は「Adobe Experience Cloud」公式サイトへ)

 

すなわち、データプライバシーやセキュリティー規制に対応した上で、あらゆる情報源からデータをリアルタイムで収集・統合してしっかりとした顧客プロファイルを構築、またカスタマージャーニーのあらゆる段階のデータを収集・統合・分析し、莫大な顧客データから誰もがアクションに活かせるインサイトをすばやく獲得できるようになります。これにより、次世代のオムニチャネルコミュニケーションに不可欠な環境を構築できるでしょう。

 

おわりに

自社の製品やサービスを提供していく上で、ユーザーの情報を収集・分析し活用していくことは企業にとって必要不可欠です。クッキーレス化に伴い、より自分たちでデータ収集を行っていくことが重要となった現在において、Webサイト制作における戦略構築はますますその重要性を増しています。

また、CXMを取り入れることで、コロナ禍で重要性を増したオムニチャネル戦略(店舗やECサイト、SNSなど、オンライン・オフラインを問わず、あらゆるメディアを活用して顧客と接点を作り、購入の経路を意識させずに販売促進につなげる戦略)を促進させるのにも役立ちます。サイトの向上はもちろん、CXMプラットフォームなどを用いた製品の利用も検討しながら、より顧客満足度の高いサイト作りを目指していきましょう。

 

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