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WordPress5.9から実装される「フルサイト編集機能」は使える?

WordPressは2022年1月25日(米国時間)に大規模なアップデートが予定されており、目玉機能である「フルサイト編集」(FSE)が実装されます。2018年に実装された「Gutenberg」以来のエディタ機能の大幅改良となりますが、フルサイト編集機能でどのように変わるのか、どういったメリット・デメリットがあるかを考えたいと思います。

 

フルサイト編集機能とは(Gutenbergとの違い)

WordPress5.9から実装されるフルサイト編集機能とは、サイト全体をブロック単位で直観的に置くことでサイト制作ができるエディタ機能です。「Wix」のようにドラッグ&ドロップで要素を置くことでページを作ることができるというわけです。

 

Gutenbergはページ内の記事エリアでブロック要素を組み立てることができるエディタですが、新しいフルサイト編集機能では記事エリアだけでなくヘッダーやフッター、メニューなども同様にブロック要素として簡単に設置できるようになります。

 

 

フルサイト編集(FSE)のメリット

 

①コーディング不要でオリジナルのサイトが作れる

FSEの最大のメリットはコーディングせずとも自分の好きなようにサイトが構築できる点でしょう。ブロック要素一つ置くにも、手打ちでコーディングする場合はレスポンシブなども含めた綿密な計算が必要で、それなりに時間が掛かります。

FSEであればブロック要素をドラッグ&ドロップで置くだけで簡単に設置することができます。コーディングができない人はもちろん、サイト制作コストを抑えたい人にとっても大きなメリットと言えるでしょう。

 

 

②その場その場でデザインやレイアウトを確認しながら制作できる

FSEでは色の変更や要素の追加などをリアルタイムに反映できるので、ページが今どのようになっているかその場ですぐ確認できるのがメリットです。プレビューボタンを押したりページ更新を掛ける、キャッシュをクリアするなどの操作が不要となるため、リアルタイムにサイトを組み上げていく感覚というのは楽でもあり楽しくもあるでしょう。

 

 

フルサイト編集(FSE)のデメリット

 

①実装できる表現がエディターの機能に依存する

現代のWebサイトではインタラクティブな表現が不可欠です。例えばモーダルやドロワーメニュー、アコーディオンといった基本的な機能から、オンマウス時のアニメーションやスクロールアニメーション、パララックス、ノングリッドなど、多くのWebサイトでこのような様々なアニメーションや表現が採用されています。WixやFSEなどのフルサイトエディターの場合、これらの表現がエディターの機能として備わっているか否かに左右されてしまう点がデメリットと言えるでしょう。

 

上記の表現は今や様々な解説サイトでCSSをそのままコピペするだけで実装可能なものがほとんどですが、フルサイトエディタ―の場合「コードを書けない人でも本格的なサイトを組める」という性質上、機能として個別に細かくCSSを記述することを想定されていないことも考えられます。

 

現代的なサイトを作りたい場合、フルサイトエディターでは十分に表現や機能を実装できない可能性もあるので注意が必要です。(ちなみにWixではかなりの種類のアニメーションが実装できます)

 

 

➁CSSで細かい調整をしたい人には不向きである可能性が高い

WordPressの利点として、デザイン性に優れたテーマをインストールした上で、CSSで自由にカスタマイズできる点があります。これによりデザインの制作フローを省略した上で、優れたデザインの上に更に自分の好きなレイアウトや必要な機能を持たせられるようになります。

 

ドラッグ&ドロップで要素を置くだけでサイトを構築できるフルサイトエディターは一見するとコーディングに時間を大幅に短縮できるのですが、CSSがある程度わかる人にとっては細かい調整や機能の追加がしづらい可能性が高いというデメリットがあります。

 

WordPress5.9のFSEはまだ本実装前のため、実際にどの程度従来の「テーマエディター」のような機能が使えるかは不明ですが、そもそもCSSを十分知っている、デザイン性に優れたWordPressテーマを知っている人にはFSEは不向きかもしれません。

 

 

➂デザイン力は必要

FSEは確かにコーディングができない人にとっては優れたエディターかもしれませんが、結局のところ1からサイトを構築しなくてはいけないのは変わらないので、そもそものデザイン力というものはどうしても必要になります。Webサイトの制作はワイヤーフレームなどからデザインを起こして、幾度もの修正を経てようやくコーディングに入るというのが本来のフローです。何もない状態からいきなりFSEで良いサイトを作るのは、その場その場で優れたデザインやレイアウトを構築できるような能力を持った人でないと難しいでしょう。

 

FSEでサイトを作る場合はFSEで作ることを前提としたフローやルール作りが必要となり、保守性の面でも「FSEの操作スキル」が必要になることから、多くの人が制作に携わるような企業サイトやサービスサイト、商用サイトをFSEで制作するのは現実的ではないと感じます。

 

 

WordPress5.9のフルサイトエディターはどう使う?

このように考えると、FSEの利用シーンというのはそんなに多くないのではないでしょうか。

 

・デザイン寄りのスキルを持っている
・コーディングはできない
・個人規模のサイトの作成(複数人が制作に関わらない)
・アニメーションなどの表現にこだわる必要がない

 

FSEを効果的に利用できる条件はおおよそ上記になるでしょう。とはいえ、このような条件が当てはまる状況はそんなに多くはないでしょう。まだ本実装前のため、実際に触ってみなければ答えは出せませんが、現時点ではあまり利用シーンが思い浮かばないというのが正直な感想です。

 

本実装後にまた実際に触ってみれば新たな発見があるかもしれないので、その時には改めて記事にしたいと思います。

 

 

まとめ

グーテンベルクとは異なり、今のところFSEは特定のテーマでしか実装されないと思われるので、WordPress全体が即FSEでしか作れなくなるというわけではないでしょう。ただしグーテンベルクも含め、WordPressの方向性としてノンコーディングに向かっていることは明らかです。Webサイトやアプリなどの制作ハードルを大幅に下げるノンコーディング自体は非常に有益な手段となり得るので、フルサイトエディターのような次世代の制作プラットフォームが主流となる時代もいずれはやってくるでしょう。

 

実際Wixでは様々なアニメーションを実装できるようになっているため、現代的な動きのあるサイトを作ることも十分可能です。とはいえ、多機能であるが故に「そのツール自体の操作スキル」が求められる面もあります。FSEやWixなどが持っている機能を最大限引き出すには、Webサイトではそもそもどういった表現ができるのかという知識も必要です。その知識や視点は実際にコーディングができる人でないと持つのが難しい面もあるでしょう。

 

今後フルサイトエディターのようなノンコーディングツールが標準となるとしても、デザインやコーディングの知見を持つプロの力が不要になることにはならないでしょう。しかし制作の間口が広がる事になるのは事実なので、ノンコーディングの時代が本格的にやってきた時にWeb制作者としてどのような立ち回りが求められるかは今から考えておく必要があるかもしれません。

 

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