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ライブコマース人気による中国EC市場の成長とは

ライブコマース人気による中国EC市場の成長とは

中国のEC市場は、国産ECプラットフォームやSNSの利用により、独自の発展を遂げてきました。国土の広さなどの地理的背景もあり、もともとECの成長率が高かったところに、近年のステイホームの影響や人気インフルエンサーによるライブコマース人気がさらにその成長を加速させています。

コロナ化での中国EC市場の活況

報道によると、現在の中国EC市場は、2020年1~6月の中国ECの小売り額は、前年同期比7.3%増の5兆1500億元(1元=約15円 約76兆円)、と拡大しています。その拡大の要因は、ECセール・クーポンなどによる消費喚起、KOLなどライブコマースによるECの拡大、越境ECの急成長にあります。そして、この傾向は今後も続くと考えられています。ある調査によると、中国のロックダウン中とロックダウン解除後の土日の休日の過ごし方を表したものですが、「インターネットショッピング」はロックダウン解除後でも56.6%と高水準で利用されていることからも分かります。中国EC市場は、今後もWithコロナにおいても拡大し、消費促進、貿易の安定化などの面でより大きな役割を果たしていくでしょう。

WeChatで実店舗との役割、活用方法

WeChatは、実店舗とECを繋げる役割を果たします。例えばあるチェーンでは、集客のため、来店した顧客にWeChat アカウントのフォローを促し、ライブコマースの開催やその際の特典情報を送っています。
現在は、小売店だけでなく、ブランドもWeChatを活用しています。最近では、オンラインで接客をするという取り組みも始まっています。このようにして繋がった顧客とはWeChat 内のグループでコミュニケーションを取るなどして、関係性を深めていきます。

WeChatでは企業や店舗がECやライブコマースへの集客拡大のためのたくさんの施策を行うことができます。例えば、広告出稿やフォロワーへのプッシュ通知、動画コンテンツでの露出などです。
WeChat内でECを展開することは、今や主要なブランディングの立ち位置になっています。WeChatの利用者はたいてい決済 サービスのWeChat Payも使っているので、顧客にとってはスムーズに購入しやすい場となっています。

ライブコマースの活用について

ライブコマースは、主に2種類のタイプに分けられます。1つは、先述したKOLが販売する大規模ななもの。もう1つは、WeChatなどのSNSのライブ機能で店舗が既存顧客向けに行う小規模なものです。

前者は、基本的に店頭などに比べて最安値で販売されることが特徴です。
そのため店頭で気になった商品があっても買わずに、ライブコマースで安く販売されているのを探して購入するユーザーがいるほどです。一方、後者の特徴としては、店頭より割引されたり関連商品 や試供品などのおまけの品がついてくるというサービスが挙げられます。このようなライブコマースは、大規模な人数に売るというよりも、既存顧客とのコミュニケーションツールとして活用されています。
2020年のロックダウン時をきっかけに、百貨店などの大手販売店がWeChatのアカウントをつくり、その利用は広がっていきました。また、SNSでのEC機能ではほとんど販売手数料がかからないのも、店舗にとって導入しやすい点でした。

このような目的に沿った導入により、ライブコマースは大幅な成長をし続けています。

圧倒的な流通量

中国の小売業界にとっての最大の販売機会は、「独身の日」と呼ばれる11月11日に開催されるセールです。多くのEC事業者がこの日に大規模なセール(双十一セール)を開催しています。2020年における双十一セールの流通総額は4,982億元であり、日本円に換算すると約8兆円。前年比185%と圧倒的な流通量を記録しました。

驚くべき事実は流通量だけではありません。モバイル端末経由の流通総額がなんと全体の90%以上を占めていた事実が分かりました。中国市場においてモバイル経由の流通は欠くことのできない存在となっているのです。このため、中国EC市場を視野に入れたEC事業を行う際は、モバイル端末を想定した施策が必須となります。
モバイル流通額が圧倒的に多い理由は、中国における主流決済サービスがモバイル中心であるためです(代表的な決済サービスは、アリババグループが提供している「アリペイ」や、「テンセント」「ウィーチャットペイ」など)。逆を言えば、日本では身近なクレジットカードが普及していないので、モバイル決済への対応が必須となります。
また、ここ最近の顕著な動きとして、「ライブコマース」人気が挙げられます。中国では、 KOL(キー・オピニオン・リーダー)と呼ばれるインフルエンサーがライブコマースを行います。誰がその商品を推薦しているかが重要視されているからです。日本でインフルエンサー
というとユーチューバーなど特定の影響力を持つ人を思い浮かべますが、中国では特定の分野に対して影響力や知識がある著名人がKOLとなり、ライブコマースに出演したり、企業のアンバサダーを務めたりします。

何百億円も売り上げるKOLもいるため、ライブコマースは既存の広告以上に収益を上げられるようになってきています。実際、何百億円も売り上げたKOLも出てきています。KOL広告市場は2020年に約1.1兆円、2021年も約1.6兆円市場になると予想されています。 KOLは特にZ世代(1990年代後半~2013年までに生まれた年代)に強い影響力を持ちます。中国のZ世代はおよそ2億6,000万人と市場規模が大きく、かつ一人っ子政策の影響で、親からお小遣いをもらっているケースが多く、個々の消費力が高いのも成長を続ける要因と言えます。

中国への越境EC出店

中国のEC市場は成長性の高い市場であり、日本企業が越境ECを行うメリットは十分にあります。越境ECを成功させるには、在日中国人の方とソーシャルバイヤーに気に入られることがポイント。 まずは気に入られることで徐々に認知を広げていきましょう。ただ、既に日本国内で人気のブランドは、知らない間に先にすでに中国で人気がある場合があります。まず
は自社の中国における認知を把握することも重要です。
国が違えば当然その習慣や文化も異なります。日本でヒットしたからといって、そのままその商品を持ち込んだとしても受け入れられないこともしばしばです。商品やサービスがその国に受け入れられる時期も見極める必要があります。
これら一つ一つ丁寧に行っていくことが、大きなビジネスチャンスの足掛かりになっていくでしょう。

今後も成長が続く中国EC

2020年の中国EC市場規模は2.41兆 ドル(約270兆円)になり、成長の一途を遂げています。 また、小売店のEC化率が7%弱の日本と比べ、その割合が50%に達していることからも分かります。成長し続ける背景には、国土が広く、日本に比べて実店舗の利便性が悪いという点(近所で 買えないものはECで買うしかない)点が挙げられます。実際に、地方都市や農村部などを中心に、新たにインター ネット利用を始める人は増えています。

日本のように自社ドメインでのECサイトが多い国がある一方、「淘宝(タオバオ)」や「天猫 (Tmall)」といった ECモールや「WeChat」などのEC機能を持つ SNSでの出店をメインとするのが中国EC市場の特徴。一度ユーザーになればそのプラットフォーム内 で決済まで一気に行えたり、購入後数日は送料無料で返品可能 だったりと、ECでの購入を促すメリットが散りばめられています。
また、2020年から続いたステイホームも、EC市場が伸びた一因となりました。従来は実店舗で購入していた食品などの購買が飛躍的に高くなっています。

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