クッキーレス対策〜これからのデータ取得方法とは?〜
2、3年ほど前から、クッキーレスという言葉をよく耳にするようになりました。米国Appleが開発したブラウザsafariでは、2018年からITP(Intelligent Tracking Prevention)と呼ばれる規制を強化する仕組みが導入され、Webブラウザで大きくシェアを占めるGoogle Chromeも2023年には後述する3rdパーティークッキーを禁止する機能を導入する予定です。クッキーレスとなることでどのような影響があるのか、今後データを取得する方法はどうなっていくのか解説していきます。
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クッキーレスとは~定義とその背景~
クッキー(Cookie)とは、Webサイトへアクセスを行なった際に、サイト側が同じ人が再訪してきたときにわかるように、WebサーバがユーザーのPCやスマホに保存する小さなデータファイルを指します。
また、クッキーは発行されるサーバによって、1stパーティクッキー(訪問したサイトが発行するもので、自社のwebサイトを訪問したユーザーの情報を管理するために利用される)と、3rdパーティクッキー(訪問したサイトとは別の第三者が発行するもので、複数のサイト(ドメイン)を跨いでユーザーの情報を記録・管理することが可能)の2種類に分類されます。
クッキーレスとは、その名の通り、クッキーが使えなくなることを意味します。ただし、ここで禁止される対象は前述した2種類のうち、「3rdパーティクッキー」のみとなっています。クッキーレスが進む背景にはクッキーが取得するデータの内容が関係しています。すなわち、クッキーはユーザーの訪問履歴、いわゆるトラッキングデータを取得します。
ユーザーは通常自分の興味関心があることを検索しますので、訪問履歴を得ることはその人が何に興味関心があるのか、何を求めているのか知る貴重なヒントになるため、企業や広告ネットワーク会社にとって広告の選出をする場合など、とても役立つ情報となります。しかしながら、こうしたデータの収集は今までユーザー本人の許可なく行われてきました。個人情報保護の重要性がより叫ばれる現代において、このような無許可の情報収集を防ぐことが、クッキーレス化の大きな目的の一つと言えます。
クッキーレスがもたらす企業への影響
企業への影響としては、まず、トラッキング禁止により、3rdパーティクッキーで収集されていたトラッキングデータの精度が落ちることから、Web広告効果の低下が懸念されています。中でも、特に大きな影響を受けるのはリターゲティング広告を主軸にしてきた場合でしょう。リターゲティング広告とは、自社サイトを訪れたユーザーを追跡し、一定期間後に再度広告を掲載し、再アプローチする手法です。
実際にサイトを訪れたユーザーをターゲットに対して配信するため、コンバージョン率が高くなりやすい利点があるため、数多く利用されてきましたが、今後これが利用できなくなるため、顧客獲得戦略をリターゲティング広告に頼って実施してきた企業にとっては、大打撃を受ける可能性があるといえます。
このように、企業にとってクッキーレスへの対応はWebマーケティング戦略において早急な検討課題です。以下ではクッキーレス化への対応方法について解説します。
これから求めるべきデータとは
前述の通り、クッキーレスとは「3rdパーティクッキーが利用できなくなること」です。つまりその一方で、訪問したサイトが発行する1stパーティクッキーについては、同じく個人情報保護について考慮する必要がありますが、基本的には今まで通り利用が可能となっていることから、これからはこの1stパーティクッキーの利用を検討していくことが重要と言えます。
これからのデータ取得方法を考えていく上で、特に鍵を握るのが「1stパーティデータ」です。1stパーティデータとは、1stパーティクッキーに加え、購買履歴やPOSデータ、自社が保有する顧客情報など自社サイトで収集したユーザー情報を言います。
1stパーティデータは自社サイトで収集したものであるという性質上、他の情報と比べて収集方法が明確であり、最小限のリスクでかつ多くの場合無料で活用できます。また、直接ユーザーから取得するため一定程度の品質・信頼性があるといえます。
その他、顧客や見込み客が自社サイトで自社商品に対してどのように行動しているかを正確に把握することができ、顧客ニーズをより把握することができるのも大きなメリットの1つです。こうした情報をしっかりと収集し、活用することで顧客一人一人に最適なアプローチができるようになるといえるでしょう。
さらに、コロナ禍においては世界中で店頭などリアルでの購買からネットショッピングなどweb上での購買にシフトする人が増えてきています。さらにwebといってもスマホ、PC、アプリなど購入方法は様々であるため、Webマーケティング戦略やサイト制作の見直しが急務な状況の中、まずは顧客のデータがバラバラにならないようしっかりした適切な管理が求められます。このような点からも1stパーティデータを収集・活用することは企業にとって大きな利点と言えるでしょう。
1stパーティデータのより効果的な取得方法
1stパーティデータのより効果的な取得方法としては、基本的にユーザーにしっかりと自社サイト内を回遊してもらえるようなサイト作りが大前提といえます。それを踏まえて、ユーザーの興味を明らかにするためのコンテンツを種類ごとに分けて用意するなどして、ユーザーの行動から、どんな興味関心を持っているか探っていくのが良いでしょう。
また、データは1度取得しただけではその取得時の情報しか得られず、情報鮮度が停滞してしまうため、最新のユーザー情報を取得するために、ユーザーがサイトを利用する時などに徐々に追加のデータ収集を行えるよう事前に戦略を立てておくことがキーポイントと言えます。例えば、自社商品に興味を持ったユーザーに対し登録を促したり、クーポンを提供したり、またアンケートを配布するなどの施策を打つとより効果的です。それら施策から取得したデータはユーザーの興味関心を推し量る上で、非常に重要なデータとなるでしょう。
もっとも、先述したとおり、データ取得をする際は個人情報保護の視点も忘れてはなりません。自社サイト訪問者に対するデータ収集についてクッキーレスの対象となるわけではないですが、2022年個人情報保護法改正に伴い、特にデータ漏洩等をした法人に対し非常に厳しい罰則や罰金が設定されるなど、コンプライアンス違反に対する罰則強化が行われる予定です。ユーザー情報の収集・管理にはより十分な注意を払う必要があります。
パーソナライゼーション2.0という考え方
最近、新たなマーケティング手法として「パーソナライゼーション2.0」という考え方があります。従来のパーソナライゼーションとは、顧客のニーズに応えるために、主に顧客の属性などを基に企業が顧客一人ひとりにあわせて商品を選定・提案する手法でした。しかしながら、インターネットやSNSなどチャネルの多様化、個人の趣味嗜好の広がりにより属性等に分類して対応することが顧客ニーズに合わなくなってきたことから、属性から少し離れて、その人個人の興味関心・行動に注目しようというパーソナライゼーション2.0の考え方が広がってきています。
自社で情報収集する場合、またそれを活用する場合に、少し発想の仕方を変えてパーソナライゼーション2.0の考え方を取り入れていくのも、今後の成果達成のために考慮すべき事柄と言えるでしょう。
終わりに
リスティング広告を主軸としてきた企業にとっては、自社のマーケティング戦略の大転換期にあるといえます。ただ、インターネットやSNSの普及によって、顧客の興味関心やニーズが多様化していく中で、個人情報に配慮したデータ収集・活用ができるようになれば、自社にとって非常に大きな力となるでしょう。自社の成果に繋がるよう、どのようなデータを取得したいのか、管理方法は適切か、どのように活用していくか、一つ一つ見直し、設計していくことが重要です。