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店舗と同様のおもてなし 消費者視点で見るEC 新常識

Withコロナ下でのステイホーム拡大も相まって、EC市場の成長が加速された近年。実際に消費者は今何を求め、どこにその価値を見出しているでしょうか。以下では、さまざまな視点から解説していきます。

 

売れ筋商品に見る消費者の購買傾向の変化

新型コロナウイルス蔓延に伴う緊急事態宣言の影響で、売れ筋商品にも大きな変化がありました。特に、感染予防対策や、巣ごもり充実アイテムなどの商品が大きく売上を伸ばしています。

また最近では、新型コロナ以前よりも自宅のリフォームやリノベーションをする人が増加傾向にあるのも特徴です。おうち時間が増えたことにより、より快適に過ごすために環境を整えたいという思いから増えていると考えられます。これにより、自分に合うよりこだわった商品を選んだり、生活の質や効率を上げる商品の需要が高まっています。

例えば、家電です。感染予防対策として、空気清浄機などの空調家電の売れ行きが好調となっています。また家で食事をすることが多くなっ たため、冷蔵庫のような大型家電から性能の良い炊飯器まで台所家電を新調したり、自宅で簡単にエクササイズができるような美容健康家電を購入したりと、幅広い需要増加が見られます。

 

サステナブルやグリーン商品に対する好意的なイメージの増加

売れ筋商品の変化だけでなく、消費者の購買行動が大きく変化している点も注視すべき点の1つといえます。Shopify Japan株式会社が発表した『5つのコマーストレンド予測』によると、サステナブルやグリーン商品に対して、『購入するときに好意的と捉える』と回答した消費者は全体の26%にあたり、そのうち42%は34歳以下の若年層が占めています。EC利用の多い世代を中心に、消費者傾向が変わってきたといえます。

 

企業側でも同様に、環境や社会問題に配慮した商品を購入する消費、いわゆる『エシカル消費』の形に沿うような販売対策が始まっています。特に、緊急事態宣言下で時短営業や休業要請等で大きな打撃を受けた食品業界は、改めて浮き彫りとなったフードロス問題の対策に取り組んでいます。

サブスクリプションやシェアサービスを利用する人が増えたというのも、 環境等に配慮した動きの1つといえます。例えば、洋服や家具家電などのサブスクリプション サービスは、オンライン上で簡単に契約できることもあり、近年需要が拡大傾向にあります。注目 の商品を気軽に生活へ取り入れること ができるメリットだけでなく、大量消費、大量生産の時代から、必要なものを必要な分だけ使用する消費の考え方が増えてきたことが支持される所以といえます。消費者の新たな考え方や価値観も考慮してサービスを展開していくことが

ECの分野においてもより重要なポイントと言えるでしょう。

 

「安心安全」かつ「利便性の高い」ECサイト

消費者の購買行動を考える上で注視すべき点はもう1つあります。ECサイトの安全性と利便性の高さです。「せっかく安価に買えたと思ったら粗悪品だった」、「写真と実物が違いすぎる」、「出品者と連絡が取りづらく不便だった」などのトラブルが、ECサイトでの購買行動を阻害するものでした。そういったトラブルを解消すべく、出店者の評価や口コミなど、さまざまな観点から「安全性」を確認する傾向が高まっています。

 

また、消費者はECサイトを利用する際に重要視している事柄として、「無料配送であること」、「配達日に関する明確な情報」、「迅速な返品対応」が挙げられており、スピーディーな配送が求められていることがわかります。

これからの時代、ECサイトも安全性がありかつスピーディーな利便性を常に進化させることが大切になってくるでしょう。

SNSで購入を決めたあとに、調べる

その他に、顧客の購買行動の変化として「先に購入を決めて、あとから商品について調べる」ということが挙げられます。最近のInstagramやYouTubeなどでは、商品への感想がたくさん投稿されており、気軽に見つけることができます。100万人を越えるフォロワーを持つインフルエンサーのパワーはもちろんインパクトはありますが、最近では一般消費者の投稿の方がリアリティがあり、より身近に感じられるとのことから、それほどフォロワー数の多くない一般消費者からの口コミを元にすぐにSNSで購入を決めるという購買行動が定着し始めています。インフルエンサーも、専門性があったり個性が強い人の方が好まれる傾向にあります。このことから、SNS対策は消費者が持つイメージや考え方からもアプローチする必要があることがわかります。

 

EC業界の最近の取り組み

AI(人工知能)を組み合わせることは、EC市場でも行われています。特に分析に優れ、訪問者に対してすぐに「どのサイトから来たか」「今見ている商品は何か」などの分析を行い、内容に応じて適切なな接客を行うことができます。また、結果をレポートとして蓄積することで、より効果的な接客方法を見つけるのに役立ちます。購入をするかどうか悩んでいる顧客に対し、購入を後押しするためのAI活用もなされています。例えば、特定の商品ページを何回も表示させたり、似た商品をぐるぐる見ていたりといった動きがある場合、AIは閲覧者が購入するかどうかを悩んでいる状態と判断します。的確なタイミングで適切なバナー等を表示させることは、購入意欲を高めてくれることに繋がるでしょう。また、データに基づき、DMやキャッチコピーも含め、最適な方法で商品提案を行うことも始まっています。

実店舗からECにシフトするアパレル業界

アパレル業界では実店舗からECへ、販売チャネルのシフトが進みました。緊急事態宣言で実店舗の休業や時短営業を余儀なくされたほか、感染防止の観点から対面での接客を行いにくくなったことで、各社がECシフトを加速させています。ライブコマースや、店舗スタッフによるSNSへのコーディネート投稿など、オンラインでの商品提案を強化する動きが高まっています。新型コロナウイルス感染拡大の最中、74%の日本人がオンライン購入を経験し、55歳以上の高年者層でも3人に1人がオンライン購入にシフトしています。この流れは、今後もどんどん大きくなると予測されるため、より早くECサイトへのシフトを加速することが重要です。

 

在宅ワークで自宅用事務用品や昼食宅配のニーズ

この1、2年で在宅ワークやテレワークがだいぶ広がってきました。これに伴い、自宅で効率的・快適に仕事をするための事務用品等を購入する消費者が増えており、このニーズに応えるECのサービスも台頭し始めています。また、「ウーバーイーツ」や「出前館」など宅配サービスで昼食を購入する人も増えてきており、少額からでも宅配可能なメニューが増えるなど進化を続けています。

 

ステイホームの後押しを受けたEC利用者の増加

2020年はECのオンラインシフト化が加速した年でした。一方で、ECを利用する消費者の傾向にも大きな変化が見受けられました。最も顕著な特徴は、新規利用者が増えたことが挙げられます。従来からECを利用していた人の利用頻度が増加したことはもちろん、さらには幅広い年齢層からの新規顧客 が増えているデータが出ています。今まで二の足を踏んでいた層が、新たな購買方法を始めるきっかけになったものと考えます。

ただしそうはいっても、中年層(35歳以上〜54歳)、高年層(55歳以上)のECサイト利用者割合は未だ半分の割合には達していません。システムのわかりにくさ、インターネットの使いづらさなどがネックとなっています。新型コロナウイルスが終息しても、このオンライン化の流れは止まらず、よりオンライン中心の社会となっていくでしょう。今後は、このような課題を解決していくことも大切になります。誰でも使いやすいサイトを目指すことが、EC市場全体に活性化に繋がるでしょう。

 

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