アドフラウドとは?不正広告の手法と対策について解説
ネット広告配信がますます重要となってきた現代。広告を通じてどのようにユーザーに商品・サービスを届けるか、日々頭を悩ませる企業も多いのではないでしょうか。
しかし、企業の努力を嘲笑うかのように、広告費を騙し取る犯罪も増えています。そのような犯罪にあわないようにするためにも、不正広告対策について学んでいきましょう。
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アドフラウドとは
アドフラウド(ad fraud)という言葉をご存じでしょうか。
アドフラウドとは、デジタル広告で起こる詐欺的な広告や不正広告のことを言います。広告主がGoogleなどのプラットフォームに広告費を支払って広告を出稿しているにもかかわらず、ユーザーがアクセスしたかのように見せかけて広告を表示させ、広告費を搾取します。いわゆるbotによる不正クリックの水増しを思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。
電通が2022年2月に発表した「2021年日本の広告費」の調査結果によると、2021年の日本の総広告費は通年で6兆7,998億円(前年比110.4%)で、コロナ禍で落ち込んでいた2020年末から回復傾向にあります。特に、「インターネット広告費」は前年比121.4%成長の総計2兆7,052億円で、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の「マスコミ四媒体広告費」の総計2兆4,530億円を初めて上回った年となっています。細かく分けると、運用型広告は1兆8,382億円(前年比126.3%)、予告型広告は前年比111.1%と高い成長率を維持しています。
日本の広告の主流はインターネットとなり、今後より効果的な広告配信を行うべく、各企業はWebマーケティング知識を強化していく必要が出てきているといえます。
このような環境下で広告詐欺が蔓延ってしまうと、日本経済に大ダメージを与えかねません。少し前のデータにはなりますが、アメリカのFronsiq社が1日162億のアプリ上のインプレッションを確認した結果、アプリアドフラウドによる損失想定金額は、8.57億円を越えると予想しています。他の犯罪と同様に、手口は年々巧妙化、高度化しています。アメリカでは、逮捕・起訴など対策がとられていますが、日本ではまだ認知度も低く、効果的な対策はこれからという状況です。このため、企業はより一層危機意識を持って、対策に取り組んでいく必要があるでしょう。
なお、日本インタラクティブ協会(JIAA)は、2017年8月に「アドフラウドに対するJIAAステートメント」を発表しています。
アドフラウドの仕組みとその危険性
アドフラウドは、ハッカーや不正業者が発端となりますが、その拡散はテクノロジーの知識が乏しく、知らないうちに感染したボットをインストールしてしまった一般ユーザーによることが多いのが特徴です。後述のようにアドフラウドにはいくつか種類がありますが、具体的な仕組みは次のようになります。
①ハッカーや不正業者がアプリケーションやプログラム(bot)を作成し、ボットネットから操作できる環境を構築します。
②フリーアプリのインストールなどに紛れて、一般消費者のデバイスにボットをダウンロードさせ、インストールさせます。普段からウイルス対策をしていない方は、ぜひご自身が使っているPCやスマートフォンのセキュリティが脆弱になっていないかすぐに確認しましょう。
③ボットネット運営者がボットを操作し、質の良いサイトにアクセスさせ、Cookieを取得させます。取得したCookieで、偽物のユーザープロフィールやWebサイトを構築すれば、本来の広告とは異なる広告が作成されます。そのため、本来の広告主は得られるはずだったクリックが得られなくなるなどの事態が生じてしまいます。
④上記のサイトに広告が出稿され、継続的にボットに表示されると、不正や広告インプレッションやクリックなどの対価として不正業者やハッカーに広告費が支払われることになります。
上記のように、自分で偽物の広告を掲載するためのサイトを立ち上げるほか、アフィリエイトサイトなどでのアクセス・クリックの偽装も行われています。また、サイトの規模や信頼性を本来よりも高く見せかけたいサイト運営者からの依頼により不正アクセスを増やすなど、様々な方法で不正に金銭・報酬を得ています。魅力的なサイトに仕上げたいがために不正に手を染める人が増えないよう、厳しく規制していく必要があるでしょう。
アドフラウドはインプレッションやクリックを不正に発生させることで、広告主に大きな影響を及ぼします。具体的な影響は次の3つに分けられます。
まず一つ目は、「収集データの質の低下」です。自社の正規の広告と偽物の広告のデータが混ざって計測されてしまうため、正確なデータが取得できず、さらにどこでどのような不正が発生しているのか、どの程度水増しされているのかを把握ができないため、解決は非常に困難を極めます。データは現在だけでなく、将来的にも非常に重要な資産となるため、企業にとっては大打撃となります。
二つ目は、クリックの水増しによる「広告費の不正搾取」です。デジタル広告の主流となっているGoogleやYahoo!、その他多くの配信面ではクリック課金制(PPC)を採用しています。せっかくコンバージョン単価など費用面を吟味して設定しても、無駄なクリックが増えることに比例して、成果達成につながらない無駄な費用を支払い続けることになります。クリック数が多いにも関わらず、コンバージョンがおもわしくない場合は、アドフラウドの被害に遭っている可能性があるので注意が必要です。
三つ目は、「ブランドイメージの低下の危険性の増加」です。デジタル広告は、ブランドセーフティ機能のある配信プラットフォームで配信する場合、ブランドイメージと全く異なるなど、明らかに出て欲しくないサイトには広告の掲載が出ないようにコントロールすることが可能となっています。しかしアドフラウドの場合は、どのWebサイトに広告が表示されるか分からず、予期せぬ形でブランドイメージの低下が生じる可能性があります。一朝一夕ではできない、長年かけて築き上げてきたブランドイメージが一瞬で崩壊しないようにするためにも、アドフラウドについてきちんと学び、アンテナを張り続けていくことが大切です。
アドフラウドの手法
対策を取るためにも、アドフラウドにはどのような手法があるのか、知っておくことが重要です。一般のユーザーや広告システムの弱点を利用するもの、ハッカーが広告費詐取のために作ったプログラムによるものなど、その手法はさまざま。ここでは次の6つをご紹介します。
①隠し広告
隠し広告とは、ページ上の見えにくい部分に広告を挟み込んで表示させたり、ピクセル状態で表示させる手法です。実際にユーザーには見えていなくても、システム上では表示させているため、課金の対象になります。CSSなどのシステムの操作で行われるので、非常に見つけにくいものとなっています。
②自動リロード
広告表示やページ自体を何度も自動的にリロードすることで、価値のない多くの広告を表示させ続ける方法です。例えば、あるページでユーザーが動画を再生している間、見えないところで広告が高頻度で自動リロードされていた場合、それだけで膨大で無意味なインプレッション数を発生させることになります。
③広告費詐取のためのプログラミング利用
ハッカーや不正なプログラマーが、プログラミング技術を駆使して、自動的に広告のインプレッションやクリック数を水増しさせる手法です。技術者が悪意を持って行っている点でタチが悪く、同じようにプログラミング技術を持つ人でないと見つけるのが困難な点で厄介です。
④不正な広告の挿入
不正な広告の挿入とは、他社サイトの閲覧時に、そのサイトに関連する広告かのように表示する手法です。いつの間にか業者によって不正な広告にすり替えられることで発生するため、広告主の知らない間に多く広告が表示されるなどの危険性があります。
⑤個人端末の乗っ取り
ユーザーが使用しているコンピューターやスマホなどのデバイスに、ウイルス(マルウェアなど)を使って、不正プログラムに感染させ、自社広告を強制的に表示させる手法です。画面上ではブラウザが立ち上がっていない状態に見える場合でも通信が行われていたり、意図に反してクリックさせて、広告の表示回数を不正に増加させたりするなどの方法もあります。スマホの場合は、ロック状態の裏で広告表示が行われていることも。問題が個人の端末にあるため、企業側だけでは対処がしづらい点で非常に厄介です。
⑥過度な広告表示
一つ一つの広告がきちんと見られないほどの大量の広告で、一つのページを埋め尽くす状態を言います。広告の誤クリックを誘発させ、また不正にトラフィックを増やすこともできる点が特徴です。検索スパムやSEOのスパムなどと組み合わせて不正が行われています。検索ページでは正常なページとして表示されているので、ユーザーとしては不意打ちで不快なページに飛ばされることとなり、広告主へのイメージダウンに繋がりかねません。
いずれの手法も、広告主・ユーザー側からは不正が行われていることに気づくことが難しく、気づいたとしてもどこで不正が発生しているのか、対処出来るものなのかわかりづらいため、解決のハードルが高いと言えるでしょう。また、信頼できる配信プラットフォームであっても、連鎖したアドネットワークなどが原因でアドフラウドが入り込む場合もあるので注意が必要です。
アドフラウドへの対策方法
厄介なアドフラウドの餌食にならないためにも、対策は必須です。
アドフラウド対策には、不正を検知し、排除する仕組みを導入することがおすすめです。ハッカーや不正業者に狙われやすいのは、大量のインプレッション獲得や安価なクリック数の獲得に重点を置いた質より量の運用手法をとっているケースです。安い広告枠のあるマーケットは、低品質なものも参入しやすいため、偽造された広告枠や不正な広告枠がマーケットに溢れている可能性が高くなっています。このような中で、広告枠を大量に出稿すると、不正業者による大量のインプレッションやクリックが発生するリスクが高くなります。一方で、結果だけ見れば運用自体はうまくいっているため、不正に気づかなければそれを成功事例としてさらに質より量を重視した運用が継続されるという負のスパイラルにつながる恐れがあります。
このような状態にならないためにも、量よりも質を重視した運用手法をとっていくことがアドフラウド対策に有効といえます。質を重視することで、質を考慮したメディアプランを設定でき、優良な広告枠が多いマーケットで広告費を投資できます。このようなメディアのフラウド率は低く抑えられる傾向にあるため、キャンペーン効果が正しく評価され、正確なデータを用いた効果改善に繋げることができるといえます。
Google広告は公式サイトで、アドフラウドを含むデジタル広告の無効なアクティビティに対するGoogleの対策について記載しています。Googleでは、広告で無効なトラフィックが発生していると思われる場合、広告主はGoogleの専門チームに調査依頼を出すことも可能です。詳細は、Google広告公式サイト「Traffic Quality」→「皆さまにできること」→「広告主様のためのリソース」のページをご参照ください。その他、アドフラウド対策に関するツールも様々出ていますので、対策の一つとして検討することも選択肢の一つといえます。
終わりに
広告主・メディア・ユーザーいずれにとってもデメリットしか生まない大変厄介なアドフラウド。
今後ますますデジタル広告の重要度が増す中で、広告運用の根幹を揺るがす広告詐欺への対策は急務です。今一度、ご自身の広告データにおかしな点はないか、確認してみましょう。
広告を出稿する際も安易な効果測定指標を設定するのではなく、成果を達成するためのより良い道は何かを考慮しながら、メディアプランを立てていくことがポイントです。成果に繋がる効果的な広告運用を目指していきましょう。