アプリキャンペーン(AC)におけるiOS14リリースへの効果的な施策とは
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Firebaseの導入検討
Appleが発表したiOS 14により、「トラッキング」であると定義する動作を行うApp Storeのアプリを対象に、iOS 14デバイスでトラッキングの許可を求めるオプトイン設定画面を表示することが義務化され、広告のデータ収集等に影響を与えています。
以下では、アプリキャンペーン(AC)におけるiOS14リリースに対する効果的な施策となるFirebaseについて解説していきます。
Firebaseとは
Firebase は Google が提供しているモバイルおよび Web アプリケーションのバックエンドサービスです。クラウドサービスの形態では BaaS に位置付けされます。 Firebase を使うことで、開発者はアプリケーションの開発に専念でき、バックエンドで動くサービスを作成する必要も管理する必要もなくなります。
サービスの早期リリースという要件が求められたときに、サーバレスアーキテクチャが注目され、 BaaS というクラウドサービスの形態が登場しました。サーバサイドの開発費を抑え、かつ工数もかからない。サービスの利用者が増えてもサーバの増築を意識しなくて良いなどの利点から、 Web サービスほどサーバを必要としないモバイル向けのサービスの BaaS に注目されました。
Firebase もその中の一つです。 Firebase はもともとは Google とは独立したサービスでしたが、2014年に Google に買収され、 GCP の仲間入りをしました。現在は GCP の様々なサービスと連携して使うことができるようになっています。
Firebaseを導入するメリット
ユーザーのプライバシー保護を強化するiOS14のリリースにより、IDFAを取得する際にユーザーの許可を求めることが必要になりました。これに伴い、学習できるシグナルの減少及びラグがあることで、iOS CPNにおける学習精度の低下が生じます。このような学習制度の低下幅を軽減するためには、Firebaseを用いることが効果的です。
Firebaseとは、mBaaSの一つでありアプリ開発における「バックエンド環境」を提供するサービスを指します。アプリの使用状況とユーザーエンゲージメントについて分析できる機能など多彩な機能を備えているのが特徴です。
学習精度を補完できる理由は、①他SDKと比べて、シグナルの量が豊富で質が良い点、②Firebase限定機能が活用できる点にあります。
具体的には、次のとおりです。
Firebaseが学習精度を補完できる理由
まず、シグナルの量が豊富で質が良いのには2つ理由があります。
一つは、学習に最低限必要なイベントを網羅的に自動収集されるためです。追加コーディングなしで、ユーザーファネルを横断するシグナルを追加でき、また、より深いファネルのアクションを促す、ユー ザー行動を理解することで、機械学習モデルのパフォーマンスを向上させます。
もう一つは、ACが学習しやすいイベント名や型でデータを返すためです。学習モデルのためのより簡単なフォー マット 、「一つの共通言語 」にします。 正しく整理されたイベント名は、アルゴリズムによってより早く学習に取り込まれることになります。
次に、Firebase限定機能が活用できる理由は、この機能にはACの最適化精度の向上やtROAS最適化、Firebase Prediction(より速いCPNの立ち上げ)など、広告効果の改善や効果的なユーザー獲得が可能となる機能が複数備えられているからです。
Firebase実装で、追加コーディングなく自動でSKAdNetworkに対応可能となります。
効果的な使い方としては、ACの入札最適化にはFiirebaseを、イベント・計測目的としては3rd party SDKを並走させて利用するのが良いでしょう。
アプリキャンペーン(AC)で活用できるFirebaseの具体的な限定機能
では次に、アプリキャンペーン(AC)で活用できるFirebaseの具体的な機能について解説します。なお、現在Firebase機能活用にはGoogleのサポートが必須となっています。
1.ACの最適化精度の向上
シグナルが学習しやすい言語に標準化された上で、重要なアプリ内イベントを自動収集できます。これにより、機械学習に活用されるシグナルの量と質が向上し広告効果の改善に繋がります。Firebaseイベントに対して入札を行うことで、ACの学習期間を最大で半減させることが可能です。より標準化されたユーザーファネル全体のデータにより、キャンペーンの予測モデルの信頼性が高まり、継続的なパフォーマンスの向上も期待できます。
2.類似ユーザーの自動生成
Firebase導入によって計測されたコンバージョンを確認し、コンバージョンに至ったユーザーに類似したユーザーを判定し、追加のシグナルとしてACのCPNに共有します。優良なユーザーに類似するユーザーを自動的に見つけることによって、キャンペーンを効果的に実行可能です。作成されたオーディエンスリストは、動的なリストの作成と改善によって、常に最新に保持できます。さらに一度設定すれば、各キャンペーンのリストを作成し維持するための手作業がありません。
3.目標広告費用対効果(ROAS)に向けたACでの最適化配信
ROASに基づく入札でアプリ内行動を最大化(tROAS)します。ACで最適化配信ができ、
選択したCV期間で平均的な目標広告費用対効果を達成可能な新規ユーザーの獲得が可能です。
4.ターゲティングの除外設定
目標に合わせ、ACのターゲットから特定のユーザーグループの除外が可能(ネガティブターゲティング)。例えば、アンインストールユーザーの除外やファミリーアプリを既に所持しているユーザーの除外などができます。ちなみに、Firebaseで取得しているイベントベースでの除外は可能ですが、現状AAID/IDFAベースでの除外は不可となっています。
5.オーディエンスビルダー機能(AC Engagement用)
デフォルトのACeのリスト設計機能にはない、より高度なオーディエンスリストを設計可能です。デモグラ・除外設定、ルールに基づいたイベントリストの作成、順序(シーケンス)によるリスト設定、3日間で5回以上課金したユーザーなど特定のイベント発生条件でのリスト作成ができます。
6.オーディエンストリガー(中間イベント設定)
3rd計測ツールではイベント実装が難しいユーザー行動をイベント化することが可能です。
例としては、3回ログインしたユーザー、1日に5回詳細ページを開いたユーザーなどが挙げられます。
以上のように、FirebaseにはACで活用できる様々な限定機能が搭載されています。
iOS14リリースにより、Firebase限定機能が受ける影響について
Firebaseイベントへの最適化配信は、引き続き学習の向上や各機能の提供行う一方で、アプリ毎のユーザーの同意率に影響受けています。
iOS14のリリースに伴いもっとも大きい影響を受ける限定機能は、tROASとオーディエンス除外機能です。前者は現時点では iOS14下での提供が不可で、tCPA など別の入札戦略への切り替えが必要です。後者は同意を行ったユーザーのみ生成可能となっています。また、現在影響中の機能として、より速いキャンペーンの立ち上げと類似ユーザーの自動生成機能が挙げられます。前者は、引き続き利用は可能ですが、パフォーマンスの一定の低下が予測されます。後者は、ユーザーの同意があり、パーソナライズが可能な場合引き続き利用が可能となります。
逆に影響のないものはGA S2S/Measurement Protocolです。アプリインスタンス ID を利用し、また、1st PartyのUser IDをサポートします。
Firebase SDK実装のメリット
前述のように、Firebaseのメリットやリリースに伴う影響など解説してきました。それらを踏まえた上で、GoogleAdsとForebaseを組み合わせて利用することは、広告主にとって価値あるものであり、Firebase SDKを実装することは、ACにおけるより良い効果的な施策であるといえます。
Appleは2018年に「SKAdNetwork」というアプリインストールの計測フレームワークを導入しています。これは、収集データのみの提供、設定された時間内に発生したクリック後のインストール数総数をレポートする機能を有する、IDFAが取得できなくてもトラッキングできるツールです。Firebase SDK を最新バージョンにアップデートすることでこのAppleのSKAdNetworkを自動的に実装できるのが特徴。またFirebase SDKは、オプトインユーザーに対して引き続き自動収集イベントと標準化された データを収集しパフォーマンスを向上させ、モデルを向上させる同意ユーザーのファネル全体にかかる 1st パーティデータの追加によりパフォーマンス向上を提供します。
これらのことからACを引き続き提供する場合には、Firebase SDKを実装するのがおすすめといえます。
Firebase導入の流れ
Firebaseの実装は大きく2つのフェーズに分かれます。
一つ目のフェーズは、ACの入札CV切替(Bidding Flip)です。これによりACのパフォーマンスが向上します。その他のメリットとしては、ACのパフォーマンス・ボリュームの向上や、tROASや類似ユーザー自動生成、オーディエンス除外が挙げられます。イベントの取得については、インストールと対象のアプリ内CVだけでも動きます。
もう一つのフェーズは、イベント取得のベストプラクティスです。多くイベントが取れているとシグナル量が増えてBidding Flipの効果がさらに向上します。その他のメリットとしては、App+Web Property、アプリ内分析全般、Prediction、ユーザー行動分析などの精度が向上します。イベントの取得については、できるだけ細かくアプリ内イベントを取得できるようになります。
最終的には両方への対応を推奨しますが、通常は、入札CV切替の方が簡単なため、Firebase導入後は先行して入札切替を完了させることを推奨します。
なお、Firebaseの入札CV切替の導入手順は、
①Firebaseアプリをプロビジョン
②Firebase SDKをアプリに統合
③コンバージョンイベントをログ
④Google Adsにリンク
⑤Firebase CVイベントをインポート
⑥Firebase CVイベントに対する入札
となります。
終わりに
ユーザーのプライバシー保護の強化を目的に、IDFAを取得する際にはユーザーの許可を求めることが必要となった今回のiOS14リリース。学習精度を補完できる機能を多く持つFirebaseは、ACにおける効果的な施策となるといえるでしょう。ユーザー、広告主双方にとってより良い仕組みを考えながら、より良い広告効果の向上を目指していくことが重要です。